「クラシックカー耐久レースジャパン(CERJ)in 岡山国際サーキット」
2006年 10月 28・29日
久々に、GULF356でサーキットを走る。しかもJAF戦。
ワンメイクレースほどの緊迫感は無いけれど、参戦者は皆やる気満々。
大事な車を壊さぬよう、だけどタイムは出さなくちゃ!

このレースは、1920年代から1974年辺りまでのコンディションのまちまちな車が参加するため、
事前に車両について診査され車両係数(Coefficient)なるものを頂く。
暫定結果はチェッカーを受けた順番だが、正式結果はチェッカーを受けた時間にこの係数をかけた
タイムによってクラスごとに出されるため、意外などんでん返しがあり最後まで面白い。
今回の参戦は、9月の初めに決めた。いつも356を診ていただいているNALFの野田さんを巻き込んで
サポートをお願いし、エントラントは川西屋さんでの参戦。贅沢にも最高のメカニックお二人の
サポート。またまた大名レース!?車は、レギュレーションに最低限合わせただけ。
やる気のあるセッティングとまではいかないが、私としては現状でベストの走りが目標。
10月27日、練習枠が2本設けられていたので、足回りのセッティングを変更して試してみることに。
タイヤは、これまで履いていたPOTENZAのRE01を「DUNLOP
RACING」という昔のタイヤに履き替えた。
他の方のは皆15インチだが、私のはたまたま14インチ。このサイズには扁平率の高いものしかなく、
レースタイヤにはとても見えない分厚さ。果たして乗り心地やいかに?!
優雅なレースが予想されるため、往路はいたってのどか。ただ一人、
未知の事に対して準備して臨みたい私は、タイヤの変更による変化が凄く不安。
心配要因をあれこれメカニックのお二人にぶつけながらも、結局は乗ってみなきゃわからない?!

練習1本目。タイヤのインプレッション…雨の日に走ってるみたい!滑るぅ!
その上曲がっていかない!!どうしたらいいの?!私の超未熟な知恵を超えていた。
まさに洗礼を受けた感じ。2本目。足回りを変えてみた。後ろをもっと柔らかく。
随分乗りやすい。これで行ってみよう!

明けて予選当日。予選前に20分の練習走行。

野田さんと相談して、これまで6000回転ぐらいでシフトアップしていたところを、
3速でもう少し引っ張って7000回転くらい回してみよう、ということに。
その方がエンジンのポテンシャルが生かせそうな感じだった。
結果、すごくパワフルでいい感じ。少しではあるがタイムも短縮できて、エンジン音も快調。
これで行こう!ということでチェッカー。アクセルを緩め、車を労りながら流してピットロードへ。
とその時、カラコロカラコロという異音。エンジンさん疲れちゃったのかな?なんて思いながら、
とりあえずエンジンに負担のかからない走行で帰還。ピットで待ち受けていたお二人、「あれ?」。
早速リアフードを開け、油温を測る野田さん。「壊れたな。油温、上り過ぎてる…」「…」
「油温計、見てた?」「スイマセン、見てませんでした。いつも振れてて当てにならないので、無視してました。」
「今度から、異音がしたらすぐに停めようね。走り続けたら、どこが始めにイカレたかわからないから。」
「そうですよね。でも今回は異音がそれ程大きくなかったし、直前まで快調だったし、
音がしてからも走れたので、まさか壊れてるとは思わなかった…」
ということで、皆、ため息。予選すら出れずにレース終了…。
もう帰ろうか、それともレース観戦に切り替えるか…でもやっぱり指をくわえて観戦は空し過ぎる…
考えながら、決勝当日、友人たちと来てくれることになっていた夫に電話。
「エンジンが壊れて、出れなくなっちゃった、ごめんなさい。明日どうする?」
「げっ!じゃぁ行くのは止める。それにしても、何となく壊れるような気がしてた…
(ちなみに夫は第六感がよくはたらくヒトです)。
そういうことなら、いっそのこと今後Le
Man Classicに参戦できるように、
GULF356を作っていくことにしようよ。」
常に前向きな私たち。起きてしまったことは仕方が無いとばかり、次なる相談をして、
私はさっさと更衣室へ…向かって歩き出したその時…。
談笑中のお隣のピットのドライバーの方々が、私を呼びとめ、「調子はどう?」
「エンジンが壊れちゃったんです。」
するとすかさず、ピットに停めてあった黄色いカブリオレを指差して、「スペアエンジンがあるじゃない!」
「えっ?これ?これも壊れちゃったら困っちゃうし…」マジっすか!!?
えーっ?これ、スペアエンジン?…いいかも……。
「もし午後の予選に間に合わなくても、嘆願書を出せばいい。ね、渦尻さん?」
ちょうどその場にいらしたこのレースの主催者、渦尻さんも「嘆願書を出してあげる」と。
そして更に「うちのメカニックも手伝うって言ってるよ。」
「ありがたいお言葉!ではメカニックに相談してみます!私の一存では決められないので。」
早速、野田さんと川西さんと3人で膝を寄せて相談。っていうか即決?!
「参加することが一番。よし、やろう!」と言って下さった野田さん。
私が最も心配だったのは、それぞれ独立してご自分の流儀をお持ちの職人さんどうしが、
一緒に仕事をしたらどうなるのか。お互いのプライドがぶつかり合いやしないのか?内心ハラハラ。
お隣のピットに、「エンジンを積み替えることにしましたので、よろしくお願いします。」と、
言い終わるか終わらないかのうちに、お隣のメカニック、ローズオート社長の森正さんが、
あっという間にGULF356の下にもぐった!
社員のお二人も来て下さって、野田さん、川西さんと5人のメカニックによる積み替え作業開始。
ドキドキしながら見守る私。プライドのぶつかり合い?そんな私の懸念は即座に吹っ飛んだ。
無言のうちに手際よく作業が進む。初めて会ったメカニックの方たちなのに、息がぴったり合っている!!
その作業風景に、私はただただ感動するばかり。そして肝心の作業は、自然に野田さんにバトンタッチされた。
たった1時間で全ての作業は終了。これぞまさにプロのお仕事。テンポの合わない人が一人でもいれば、
こうは行かなかったろう。全く無駄の無い仕事ぶり!
本当にありがとうございます。




後で野田さんに、おそるおそる尋ねた。「ご自分の仕事場に他の方が入って不快じゃなかったですか?」
「僕はレースメカニックとしての経験が無いから、ここは引いて任せようと思い、エンジンを下ろす作業はサポートに回った。
とにかく走れるようにすることが大事。自分を出すことは無意味でしょ。」
私は、この作業風景を一生忘れないだろう。感動的な出来事だった。
奇跡的に、余裕で予選に間に合った。なんて幸せ!!せっかく作って頂いた機会、ベストを尽くそう!
丁寧に走った。予選タイム、2分27秒。エンジンが変わって2秒落ち。決して速いタイムではない。
多分この条件で、4秒くらいは縮めるべきだと思う。上手な人ならあと5秒縮まるかな…。
この夜の宴会が、おおいに盛り上がったことは言うまでもありません。
川西さん曰く「カブリオレのエンジンはコンクール向きに美しく作ったもの。
まさかこんな形で使うことが許されるとは思ってもみなかった。」
あっ、そういえばオーナーである夫には事後報告!夫はどんな気持ちだったのだろう?
私は勝手に「サンゴローさん(カブリオレを家族の一員として考えている私たちはそう呼んでいる。)
のエンジンも喜んでるよ」と夫が言ってくれるだろうと決めつけていた…!

明けて決勝。
6時間に及ぶ、全日本スポーツカー耐久選手権Le
Man Challengeが同日開催のため、
私たちのレースは早い。9時スタート。

いつも夫の送迎を快く引き受けて下さる隊長さんこと落合さんが、朝3時過ぎに起きて、
まずは5時に夫を、更に友人のステファンさんを西ノ宮で6時にピックアップして、8時前に駆けつけてくれた。
完走目指して落ち着いて頑張るぞぉー!

8時40分スタート進行。16台がグリッドに並ぶ。ゆっくりと最終コーナーをぬけると
川西さんが13番グリッドで待ち受けてくれていた。ん?なぜか前にクラスの違う2台の1930年代の優雅な車、
RileyとMGが…ありえない光景…ある意味面白い景色、けど私はこの2台よりも遅かったのか?!
一瞬ちょっと悲しかったが、すぐ追い抜けばいい、と思い直す。
すると、程なくその2台は私の後方へ移動。単なる間違いだった。

このレースはローリングスタート。話によると、最終コーナーで皆がべたべたに寄って、
コントロールラインが近付くと一斉にアクセルオン!とのこと。ローリングスタートの経験は3度目、
駆け引きに取り残されないようにしなければ。

グリーンフラッグが振られ、ゆっくりと全車発進。先頭は6気筒のPorsche904。
どの辺りから全開になるんだろう…とダブルヘアピン(レッドマン・ホッブス)をドキドキしながら回る。
すると最終コーナー手前から前車、全開モード!べたべたに引っ付く駆け引きなんか無し!慌てて私も全開!
でも、出遅れちゃった…。後ろのAustin Healey
Sebringに抜かれてしまい、クラス最下位で1コーナーへ。

間違いなく車のポテンシャルは私の方が上のはず。程なく安全に抜き返すと、
前方に見えてきたのはシルバーの356スピードスター。予選の時めっぽう速かった…が、どういうわけか遅い。
マシンの調子が悪いのかな、と案じつつ安全にかわし、淡々と走る。

25分で決勝が行われるが、途中1度ピットインし、1分間停止しなければならない。
ドライバー2名でエントリーしているチームは、ここでドライバー交代。1人のチームはエンジンを停止してそのまま待つ。
再スタートでエンジンがかからずリタイヤになるケースもあるという。
時間半ばを過ぎた辺りでピットサイン。ピットロードの制限速度に注意してピットイン。

停止義務を終えてコースを確認しながらピットロードを出て行くと、ちょうど少し前に私が入るという位置関係に、
先程のSebringが。良かった…と思うのもつかの間、先程までとペースが違う。明らかに攻めている!
私のインを突こうとするのだ。
しかしこのレースは皆とても紳士的。私もインに入ろうとしているのを無理に抑えようとはせず、
2台分くらい空けて譲りつつクロスを狙う。
この優雅な手に汗握る?攻防は、最終ラップの最終コーナーを立ち上がるまで決着が着かなかった。
最後のチャンスとばかりに、ナイスファイトなSebringが最終コーナーでインを狙ってきた。
来ることが予想されたので私もインを空けて入る。でも順位は絶対に譲れない!
2台ともアクセル全開にして車のパワーに任せるのみ。
私の356は全くのノーマル仕様なので回転がなかなか上がっていかない。
一体どちらが前へ行く?その間、ワクワクした。結局、パワーが優っていたのは私の356。
嬉しくて思わず拳を上げてチームに合図。とても楽しかった!

終了後、Sebringのドライバーが、「レース、とても楽しませていただきました」と言ってピットを訪ねてきて下さった。
私もこの方のおかげで愉しいレースをすることができた。
「本当に愉しいバトルでしたね!」
この方は、チェッカーを受けた時のタイムに係数をかけた正式結果でクラス総合優勝だった。おめでとうございます!

「正式結果上位のマシン」
それにしても、私以外のドライバーは皆ベテランばかり。
タイヤの特性を生かすためには、グリップ走行ではタイムが出ないらしい。
今回そのことを学んだ。
イタリア人の前オーナーによってレース仕様に作られたとても美しい356スピードスターで参戦された方が、
私を周回遅れで交わしていったので、走り方を観察させて頂くと、まるで氷上のダンスのようだった。

「ポールトゥウィンだけど係数をかけた正式結果は8位。で、私は7位。そんなレースです」
次々と新しい課題が課せられる。でも地道な練習で少しずつクリアしていきたいと思う。
時間はかかると思うけど、楽しみがいっぱい。
今回は、私に参加するチャンスを作って下さった、お隣のピットの皆様に心から感謝します。
そして、サポートして下さった野田さん、川西さんにも。もちろん早起きして応援に来て下さった方々にも!です。
来年はドライバーも356も準備万端で臨みたいと思います。
皆さん、ハラハラしながら見守ってくださいね!
ちなみにレース終了後、カブリオレのエンジンは再びカブリオレに戻され、
夫と私は大活躍してくれたエンジンの乗ったカブリオレに乗って無事帰宅しました。


「皆様、ありがとうございました」
「帰り支度」


「帰路のPAにて。このお二人にはまだお仕事が…NALFさんでエンジンのみ降ろさなければならない…お疲れ様です」

「エンジンを降ろしリアが浮き上がったGULF356」
